漬け時間は「野菜ごとの基準時間 × 置き場所の倍率 × 季節の倍率」で決まります。 レシピの「半日ほど」が当てにならないのは、この掛け算が言葉の中に畳み込まれているからです。
きゅうり(基準8時間)なら、常温・春秋で8時間、真夏の常温で5.6時間、冬に冷暗所へ置けば14.6時間。 同じ野菜、同じぬか床でも2.6倍違います。
覚えるのは、自分がよく漬ける野菜の基準時間と、自分の台所の倍率だけです。
冬と真夏の比は1.3対0.7で、およそ1.9倍です。夏の調子のまま冬も回すと同じ時間では食べ頃の5割強 (0.7÷1.3でおよそ54%)までしか進まず、逆に冬の感覚のまま夏に持ち込むと食べ頃の1.9倍の時間を漬けることになります。 夏場に失敗が増えるのは、倍率が変わったからです。
季節で漬かり方が変わるのは、温度で発酵と塩の浸透の速さが変わるからです。目安は温度が10℃下がると速度がおよそ半分。 20℃で8時間のきゅうりは、30℃なら4時間、10℃なら16時間です。
ただし効いているのは暦ではなく室温です。冷房の効いた真夏の部屋は、暦ほど夏ではありません。 月の区分で合わないと感じたら、20℃から何度ずれているかで考え直してください。
3.0倍はキャベツのほか、ゆで卵・チーズ・こんにゃく・アボカドです。 実時間の幅が長いのは、大根・にんじん・ごぼうのほうです。
常温・春秋での目安です。置き場所(常温1.0/冷暗所1.4/冷蔵庫2.0)と 季節(真夏0.7/初夏初秋0.85/春秋1.0/冬1.3)を掛けてください。冷蔵庫の場合は季節を掛けません。
| 野菜 | 分類 | 食べ頃 | 漬かりすぎ | 下ごしらえ |
|---|---|---|---|---|
| キャベツ | 定番 | 4時間 | 12時間 | 葉を数枚重ねて漬けると扱いやすい(カタログ最短) |
| セロリ | 葉もの | 6時間 | 16時間 | 筋を取って食べやすい長さに切る |
| みょうが | 葉もの | 6時間 | 16時間 | 縦半分に切って。香りが良く箸休めに最適 |
| ミニトマト | 実もの | 6時間 | 16時間 | ヘタを取って楊枝で数カ所刺すと味が入る |
| オクラ | 実もの | 6時間 | 14時間 | 塩ずりしてさっと下ゆで(食べ頃と漬かりすぎの比が最小) |
| きゅうり | 定番 | 8時間 | 20時間 | 板ずりして塩をまぶすと色よく漬かる |
| 白菜 | 葉もの | 8時間 | 20時間 | しんなりさせてから漬けると水が出にくい |
| 長芋 | 根菜 | 8時間 | 20時間 | 皮をむいて食べやすい長さに。シャキシャキ感が残る |
| パプリカ | 実もの | 8時間 | 20時間 | 種を取って縦4つ割りに |
| ズッキーニ | 実もの | 8時間 | 20時間 | 縦半分に切って。生でおいしく漬かる |
| ゴーヤ | 実もの | 8時間 | 20時間 | 縦半分にしてわたを取る。苦味がやわらぐ |
| アボカド | 変わりだね | 8時間 | 24時間 | 少し硬めのものを半分に。とろりと濃厚に |
| なす | 定番 | 12時間 | 30時間 | 塩でもんでヘタを落とすと色落ちしない。鉄玉やミョウバンで紫が冴える |
| かぶ | 根菜 | 12時間 | 30時間 | 葉を落として縦半分に。葉も一緒に漬けられる |
| れんこん | 根菜 | 12時間 | 30時間 | 薄切りにしてさっと下ゆでを |
| ゆで卵 | 変わりだね | 12時間 | 36時間 | 殻をむいてガーゼに包むと取り出しやすい |
| チーズ | 変わりだね | 12時間 | 36時間 | プロセスチーズをガーゼで包んで |
| こんにゃく | 変わりだね | 12時間 | 36時間 | 下ゆでして水気を切ってから |
| 豆腐 | 変わりだね | 12時間 | 30時間 | しっかり水切りしてガーゼで包む |
| ゆで鶏むね | 変わりだね | 12時間 | 30時間 | 必ず火を通したものをガーゼに包んで。別容器のぬかがおすすめ |
| 大根 | 定番 | 24時間 | 60時間 | 皮をむいて縦半分に。太いものは4つ割りに(最長タイ) |
| にんじん | 定番 | 24時間 | 60時間 | 皮をむいて縦半分。太ければ4つ割りに(最長タイ) |
| ごぼう | 根菜 | 24時間 | 60時間 | 下ゆでしてから漬けると食べやすい(最長タイ) |
| その他 | 変わりだね | 12時間 | 30時間 | 様子を見ながら時間を調整(自由入力用の枠で特定の食材ではない) |
食べ頃は4時間から24時間まで、最大6倍の開きがあります。「根菜は長い」は思い込みで、同じ根菜でも長芋は8時間。 長さを決めているのは分類名ではなく、太さと密度です。太い大根を4つ割りにすれば、表の24時間より早く仕上がります。
表の数字は出発点で、塩気の好み、ぬか床の塩分、切り方の厚みで結果は変わります。 浅いと感じたら次を1.25倍に、ちょうど良ければその時間を目標にしつつ、実際の変更はその半分だけにします。 味の評価はぶれるからです。
上限と下限も決めておきます。基準の0.5倍から2.0倍の外には出さないと決めれば、きゅうりなら4時間から16時間に収まり、 何かの拍子に極端な値へ流れていくことがありません。
そして覚えておく時間は「常温・春秋に換算した値」で持ちます。 冬の冷暗所で14時間ちょうどだったからと、その14時間を覚えると夏に使えません。 倍率で割り戻しておけば、季節が変わっても好みだけが引き継がれます。