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献立の材料費は、何で決まるか

最終更新 2026年8月31日

レシピには分量と手順は書いてありますが、値段は書いてありません。「今日は魚が高い」「この時期のトマトは高い」という感覚はあっても、では一食あたりいくら違うのか、と聞かれると答えにくいものです。

この記事は、献立を自動で組む仕組み(献立メーカー_EX)が材料費をはじく計算を、台所の言葉に置き直したものです。値段は全国のスーパーの平均的な相場をもとにした概算で、実際の店頭価格とは違います。それでも、どこを動かすと金額が動くのかという構造は、そのまま買い物の判断に使えます。

材料費は三つの掛け算で決まる

季節の区切りと、旬の倍率

旬で動くのは野菜と魚で、肉はほとんど動かない

同じ料理が、季節でいくら動くか

原価率は「外で買ったらいくらか」との比

季節ごとに引ける単価表

材料費は三つの掛け算で決まる

一つの材料の値段は、使う重さ ÷ 100 × 100gあたりの単価 × 季節の倍率で出ます。これを材料の数だけ足したものが、その料理の材料費です。人数を変えるときは、レシピが想定する人数との比を全体に掛けます。2人前のレシピを4人で作れば、材料費もちょうど2倍になります。

例外が二つあります。ひとつは「少々」のように重さの書かれていない材料で、これはひとつまみ分として一律4円を計上します。収録1500品のうち665行がこれにあたり、そのうち631行が「少々」。重さの書かれていない665行全体で見ると、こしょう377行と塩106行が大半を占めます。ゼロにしないのは、味の要になる行が勘定から丸ごと消えてしまうからです。なお「適量」と書かれた行は114行ありますが、こちらは揚げ油のようにグラム数が添えてあるので、4円ではなく実額で計算されます。もうひとつは単価の分からない食材で、100gあたり120円に置きます。収録している299品目の中では安めの部類にあたる値です(単価の中央値は150円)。

ここで押さえておきたいのは、倍率は最後に掛かるということです。同じ「25%引き」でも、金額の差は「単価 × 重さ」が大きい材料ほど大きくなります。旬を選ぶ効き目は、その料理の主役が何かでほとんど決まります。

季節の区切りと、旬の倍率

季節は、春が3〜5月、夏が6〜8月、秋が9〜11月、冬が12〜2月です。暦の上の区切り(立春から春)ではなく、春は3月から始まるという料理の慣習に合わせてあります。食材ごとに「旬の季節」が登録されていて、いま買う季節との関係で倍率が決まります。

食材の旬と、いま買う季節の関係倍率大根(冬が旬・25円/100g)の場合
旬にあたる0.75冬 → 18.8円/100g
旬の隣の季節1.00秋・春 → 25.0円/100g
旬の反対の季節1.35夏 → 33.8円/100g
旬が設定されていない食材1.00玉ねぎ・鶏もも肉・卵などは通年で動かない

「隣」は前後の季節、「反対」はその二つを除いた残りひとつです。反対どうしの組は春と秋、夏と冬の二組しかありません。したがって旬がひとつの食材の一年は、3か月が0.75、6か月が1.0、割高になるのは残りの3か月だけという形になります。旬を外したから高い、のではなく、真裏の季節に買ったときだけ高い、というのが正確なところです。

旬が二つある食材は、さらに割高になりません。キャベツ(春・冬)、にんじん・れんこん・ごぼう・さば(秋・冬)、なす(夏・秋)、レタス(春・夏)など11品目は、旬でない季節がどちらかの旬の隣にあたるため、1.35が一度も出ません。半年が0.75、半年が1.0です。

0.75と1.35の比は1.8です。ひとつの食材でいちばん安い季節といちばん高い季節を比べると、最大で8割の開きが出る、という上限がここで決まります。

なお、旬であることと買いやすさは別です。299品目のうち17品目(そら豆、菜の花、みょうが、ゆず、さんま、桜えび、ふきのとう、たらの芽、こごみ、ホタルイカ、うど、すだち、モロヘイヤ、グリーンピース、ビーツ、鴨肉、木の芽)は「入手しにくい」として扱われます。旬の割引がかかっても、そもそも近所の店に無いことがあります。

旬で動くのは野菜と魚で、肉はほとんど動かない

旬が登録されているのは、299品目のうち113品目です。分類ごとに見ると、偏りははっきりしています。野菜は94品目中76品目、魚介は42品目中33品目に旬があります。一方、肉は29品目のうち鴨肉の1品だけ。卵・乳製品・大豆製品・乾物と缶詰は、ひとつもありません。残る3品目は、穀類のそうめん・餅と、調味料の木の芽です。

ところが、材料費に占める割合は別の話です。収録1500品を四季ならしで足し合わせると、野菜が29.9%、肉が24.8%、魚介が22.2%を占めます。金額の半分近くは肉と魚が持っていくのに、季節で動くのはほぼ魚だけ、という構造です。だから料理ごとの振れ幅は、主役の食材で決まります。

主役の食材収録数いちばん安い季節といちばん高い季節の比(中央値)
133品1.59倍
魚介(えび・貝・いかなど)180品1.39倍
野菜535品1.31倍
79品1.12倍
豚肉172品1.11倍
鶏肉175品1.11倍
大豆製品130品1.10倍
牛肉72品1.06倍

1500品全体では1.21倍が中央値で、季節でまったく動かない料理も120品(8.0%)あります。旬を意識する価値があるのは魚と野菜の料理で、肉が主役の日は、いつ作っても同じ、と割り切ってかまいません。

同じ料理が、季節でいくら動くか

料理主役(旬)惣菜・外食の目安
ぶり大根ぶり(冬)・大根(冬)441円581円441円341円700円
鮭のムニエル生鮭(秋)485円390円305円372円550円
鶏の唐揚げ鶏もも肉(旬なし)261円261円261円261円480円

数字はすべて1人あたりです。ぶり大根は冬と夏で240円違います。中身を開くと、2人分でぶり200gの差が420円、大根400gの差が60円。倍率はどちらも同じ0.75と1.35なのに、金額の差は7倍あります。「旬の野菜を選ぶ」より「旬の魚を選ぶ」ほうが、財布には大きく効くということです。

鮭のムニエルがいちばん高くなるのは春です。生鮭の旬は秋なので、鮭そのものに1.35がかかるのは反対にあたる春だけ。夏と冬は鮭が等倍です。それでも夏390円・冬372円と18円ずれるのは、この料理に入るレモン50gの旬が冬だからです。レモンだけで見ると、2人分の代金が夏81円・秋春60円・冬45円と動き、その差が一人あたり18円として出てきます。主役以外の食材にも旬はあり、それが小さな差を作ります。

唐揚げは四季で1円も動きません。鶏もも肉にも、しょうが・にんにく・醤油・片栗粉にも旬が無いためです。

原価率は「外で買ったらいくらか」との比

原価率は、1人あたりの材料費を、同じ料理を惣菜や外食で買った場合の1人分の目安価格で割ったものです。小さいほど、作ったほうが得だという意味になります。

1500品の中央値は62.1%でした。50%未満が326品(21.7%)、50〜80%が1054品(70.3%)、80%以上が120品(8.0%)です。ここが読み違えやすいところで、60%前後は「安い」ではなく「ふつう」です。作れば外食の6割で済むのが平年並みで、そこから外れて初めて、得か損かの判断材料になります。

80%以上の120品は、その半分近い58品が副菜でした。サラダや和え物のように、店で買っても値段が上がりにくい料理は、作っても差が出にくいということです。逆に50%未満の326品でいちばん多いのは、野菜を主役にした副菜と汁物でした(合わせて113品)。主菜だけを取り出すと、豆腐・卵・野菜が主役のものは80品中35品が50%を切ります。肉や魚が主役の主菜はどれも2割に届かないので、外食との差がいちばん開くのは、豆腐・卵・野菜の主菜ということになります。

献立での位置収録数1人あたり材料費(中央値)原価率(中央値)季節による振れ幅季節による金額差
主菜597品343円63%1.13倍44円
副菜486品154円64%1.32倍42円
汁物214品156円56%1.27倍30円
主食203品263円59%1.10倍27円

割合で見ると、いちばん季節に振り回されるのは主菜(1.13倍)ではなく副菜(1.32倍)です。副菜は野菜が主役で、その野菜こそが季節で動くからです。ただし金額に直すと44円と42円で、ほぼ並びます。もとの単価が小さいぶん、割合の大きさは財布の上では相殺されます。

1人1日あたりの予算に上限を設けるなら、主菜に55%、主食に18%、副菜に15%、汁物に12%という配分がひとつの目安になります。主菜のみの日は、その全額が主菜の枠です。

季節ごとに引ける単価表

100gあたりの見積もり単価です。太字は旬にあたる季節を指します。

食材
大根25.0円33.8円25.0円18.8円
白菜25.0円33.8円25.0円18.8円
ほうれん草90.0円121.5円90.0円67.5円
キャベツ春・冬22.5円30.0円30.0円22.5円
にんじん秋・冬40.0円40.0円30.0円30.0円
トマト70.0円52.5円70.0円94.5円
きゅうり60.0円45.0円60.0円81.0円
なす夏・秋60.0円45.0円45.0円60.0円
じゃがいも54.0円40.0円30.0円40.0円
しめじ81.0円60.0円45.0円60.0円
レモン120.0円162.0円120.0円90.0円
生鮭405.0円300.0円225.0円300.0円
さば秋・冬200.0円200.0円150.0円150.0円
ぶり350.0円472.5円350.0円262.5円
玉ねぎなし35.0円35.0円35.0円35.0円
鶏もも肉なし150.0円150.0円150.0円150.0円
なし45.0円45.0円45.0円45.0円

買い物の場で使うなら、順番は三つです。まず主役を見る——肉なら季節は考えなくていい。魚なら旬かどうかで1.5倍前後の差がつきます。次に真裏の季節だけ避ける——春の食材は秋、夏の食材は冬。隣の季節はもとの値段のままです。最後に、副菜の野菜は割合ではよく動きますが、金額としては一皿40円ほどの話だと知っておくこと。ここに時間をかけるより、主菜を一日ずらすほうが効きます。