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登山に水をどれだけ持つか

最終更新 2026年9月26日

水の量は勘ではなく掛け算で出せます。 体重と行動時間から土台を出し、季節で補正して500ml単位に切り上げる。水は1Lで1kgあり、1本増やすか減らすかは、そのまま背中の1kgです。

体重×行動時間×5ml から始める

① 土台をつくる 体重60kg × 行動6時間 × 5ml 1,800 ml ② 季節の倍率をかける 夏 × 1.2 2,160 ml 春・秋 × 1.0 1,800 ml 冬 × 0.8 1,440 ml ③ 500ml単位に切り上げる 2,500 2,000 1,500 ④ テント泊なら +1,000ml 炊事に使うぶんと翌朝のぶん。小屋泊は上乗せなし
登山の持ち物アプリ「山じたく」が水の量に使っている計算です。

1日に失う水は、体重1kgあたり1時間で5ml、という置き方です。掛け算にしているのは、「1日2L」のような固定値では45kgの人と85kgの人が同じ量になり、3時間の里山と10時間の縦走も同じ量になるからです。体重を入れない場合は60kgとして計算され、行動時間は1〜14時間の範囲で指定します。

最後の丸めは四捨五入ではなく常に切り上げです。丸めで足りなくなる方向には決して動きません。季節をかけたあとの差が500mlに満たないと、季節を変えても切り上げで同じ値になることがあります。

この「季節」は暦の季節ではない

標高が上がるほど山の季節は前にずれるので、倍率の判定は標高帯ごとに違う月割りで行われます。使われるのは出発日の月ひとつです。

標高帯ごとの季節の割り当て(この季節に応じて補正がかかる)
標高帯春(1.0倍)夏(1.2倍)秋(1.0倍)冬(0.8倍)
1000m未満3〜5月6〜8月9〜11月12〜2月
1000〜1500m級3〜5月6〜8月9〜11月12〜2月
1500〜2500m級5〜6月7〜8月9〜10月11〜4月
2500m以上級6月7〜8月9〜10月11〜5月

下の2行が効きます。1,500m以上の山では夏は7〜8月の2か月だけで、冬は11月から、2,500m以上なら5月まで続きます。6月の北アルプスは春であって夏ではないので、補正は1.2倍ではなく1.0倍になります。

日数ぶんはまとめて持たない

3日ぶんをまとめて担ぐと 無理のない上限は体重の15%(60kgなら9.0kg) 水 6,000ml=6kg 残り → 水だけで上限の3分の2。防寒着も食料も入らない 1日ぶんだけ持つ 水場や山小屋で汲み直せるので、日数は掛けない 1日ぶん 2,000ml テント泊は上限が体重の25%(60kgなら15.0kg)に変わるが、 それでも水6kgは上限の4割を占める。
装備を数百グラム削っても取り返せない差です。

出てくる数字は、2泊3日でも3泊4日でも1日ぶんで、日数を掛けません。図の1日ぶん2,000mlは、体重60kg・行動6時間・秋の値です。

テント泊だけ1L足す

泊まり方で変わるのはテント泊だけで、1日ぶんに1,000mlを上乗せします。体重60kg・行動6時間・10月・2,000m級なら、小屋泊は2,000ml、テント泊は3,000mlです。テント泊の上限15.0kgのうち、3kgが水ということになります。

早見表

体重と行動時間、季節の組み合わせで、1日ぶんの量です。テント泊なら、この値に1,000mlを足してください。

1日ぶんの水の目安(切り上げ後・ml/テント泊は+1,000ml)
体重行動時間夏春・秋冬
50kg4時間1,5001,0001,000
50kg6時間2,0001,5001,500
50kg8時間2,5002,0002,000
50kg10時間3,0002,5002,000
60kg4時間1,5001,5001,000
60kg6時間2,5002,0001,500
60kg8時間3,0002,5002,000
60kg10時間4,0003,0002,500
70kg4時間2,0001,5001,500
70kg6時間3,0002,5002,000
70kg8時間3,5003,0002,500
70kg10時間4,5003,5003,000
80kg4時間2,0002,0001,500
80kg6時間3,0002,5002,000
80kg8時間4,0003,5003,000
80kg10時間5,0004,0003,500

横に見ると夏と冬の差はおおむね500〜1,500ml、縦に見ると行動時間が4時間から8時間に倍になれば量もほぼ倍です。体重と行動時間は掛け算なので同じだけ効きますが、出発してから変えられるのは行動時間のほうだけです。同じ山でも行程を短く切れば、背負う水はおおむねその比で軽くなります。

表のとおりでは足りない場面

この数字が立っている前提 1日ぶん 途中で汲める 表のとおりでは足りない場面は、自分で上乗せする 水場が使えない 涸れている。小屋の営業が終わって水場も閉まる 完全な冬山 雪を溶かして作る。水ではなく燃料の量の問題 低山の夏 気温が下がらず風も通らない。多めに持つ
前提を知らずに表だけ使うのが、いちばん危ない使い方です。

秋から冬に変わる時期の高い山では、小屋が閉じるとエスケープ先ごと無くなります。水場が使えるかどうかは、出発の1〜2日前に現地の小屋や自治体、登山記録で確かめてください。

低山の夏は、表の中では1.2倍がかかった値です。それでも早朝に登り始め、暑い時間帯に行動を終える計画にするほうが確実です。

水だけを大量に飲むと低ナトリウム血症になります。汗をかいたら塩分タブレットや経口補水も口に入れてください。ボトルは1本にまとめず分けて持つと、落としたときに全滅しません。

テント泊で水場から汲むなら、浄水器と水を運ぶ袋も要ります。