閉店後の店内で、二人がかりで棚を数え終える。帳簿と突き合わせると、合わない。どこで狂ったのか分からないので、結局もう一周する。棚卸しがつらいのは、数える作業そのものより合わなかったときの手戻りです。そしてその大きさは、数え始めたあとの努力ではほとんど変わりません。何を1と数えるのか、どこで区切るのか、数え終わった場所をどう見分けるのか。この三つを決めた時点で、ほぼ決まっています。
最初に決めるのは、何を1と数えるかです。ここが決まっていないと、数えたあとに「1袋10本だから10倍」という掛け算が待ちます。この掛け算は一度きりなので楽に見えますが、入数を1つ間違えるとその品目が丸ごと狂います。先に「1押し=1本」と決めておけば、押し間違いは1本ぶんの誤差にしかなりません。誤差が全体に効くか、1回ぶんに留まるかの違いです。
やっかいなのは、同じ品番で10本入りの袋とバラが混在している棚です。全部開けてバラに直せば単位は一つになりますが、時間がかかります。もう一つの手は、数える側を二本立てにすることです。Counter1234 の4つのボタンは、それぞれ独立した整数の幅を持ちます。袋用のボタンに10、バラ用に1を入れておけば、どちらを押しても合計は本数のまま積み上がります。
注意が要るのは既定値です。Vol- ボタンの既定は +1、Vol+ ボタンの既定は +10 で、どちらも押すと増えます。名前は表示上のもので符号とは関係がなく、減らしたいなら自分で負の数を入れます。減算はもともと、小さい「修正用」ボタン2つ(既定 -1 と -10)が担う作りです。幅の設定は入力が整数として読めたときだけ反映され、空欄や全角数字を保存すると何も言われないまま前の値が残ります。設定を変えたら一度押して、数字の動きを確かめてから棚に向かってください。
次に決めるのは、どこで区切るかです。基準は三つ、中断されずに数え切れる量、境界が物理的にはっきりしていること、そして差異が出たときに数え直しても惜しくない量であることです。三つめが本質です。差異の切り分けは区画の単位でしかできないからです。棚一列を一つの数にすると、1個ずれただけで一列すべてを数え直すことになります。棚1段ずつに割ってあれば、疑わしい1段だけで済みます。細かくするほど数え直しの範囲は狭くなり、そのぶん区切りの手間が増える。この釣り合いで決めます。
区画の受け皿になるのが、名前を付けられるメモリ枠です。初期は3件で、最大100件まで増やせます。名前は長押しで書き換えられるので、棚番号や品番をそのまま入れておけます。1区画を数え終えたら「保存」で枠に控え、カウントを0に戻して次へ移ります。控えた値は「呼出」でカウント側へ戻せるので、中断した区画も続きから数え直せます。先頭の3枠は削除できません。区画が100を超える規模なら、売場や日で分けることになります。
枠には、名前か数値をダブルタップして本体のカウントと「連携」させる使い方もあります。ただし連携枠は、カウントが動くたびに値と日時が上書きされる写し先です。次の区画へ移るためにカウントを0に戻せば、連携枠も0で上書きされます。連携できるのは同時に1枠だけで、空の枠に連携するとカウントは0になります。区画ごとの控えには使えず、走っている合計を1か所で見たいときだけのものです。
数え漏れは、区画の中ではなく区画の「あいだ」で起きます。棚の端、通路の反対側、什器の裏、レジ下、返品棚、修理に出ている分、入荷済みで未検品の分。どれも「誰かが数えているだろう」と思われる場所です。塞ぐ方法は一つで、数え始める前に区画の一覧を作り切ることです。棚に立ってから区画を思いつく進め方だと、思いつかなかった場所は最後まで出てきません。
一覧を作るとは、数える前に枠を必要な数だけ作り、名前だけ付けて値は空のまま置く作業です。値が入っていない枠は「未設定」と表示されます。数え終えた区画には数値が入るので、「未設定」が残っていないかを見れば、それがそのまま未着手の一覧になります。数えた区画に印を付ける代わりに、数えていない区画のほうが自分から名乗る形です。
二度数えのほうは、進行方向を決めていないことが原因です。左から右、上から下と一方向に固定し、戻ったときは区画ごと数え直すと決めておきます。また、枠に保存すると保存日時が自動で記録されます。棚卸しは本来ある時刻の在庫を数える作業なので、締めのあとに動いた分を後から足し引きする必要があります。どの区画を何時に数えたかが残っていれば、その調整ができます。
書き出しはCSVで、列は番号・名称・カウント・保存日時の4列です。出るのは枠の内容だけで、そのとき画面に出ているカウントは含まれません。最後の区画を枠に保存してから書き出してください。
手が塞がる場面では物理の音量ボタンでも数えられますが、0.13秒より短い間隔の連続入力はOSの自動リピートとみなされて捨てられ、反映は押した0.13秒後になります。
差異を出す方法は二つあります。0から数えて理論在庫と引き算するか、理論在庫を入れておいて現物を引いていくかです。後者は、数字を長押しして理論在庫を入れ、修正用ボタンを -1 と -10 にして引いていく形になります。数え終わったときに残っている数がそのまま差異で、0なら一致、正なら不足、負なら現物のほうが多いということです。カウントには下限がなく、0を通り越してそのまま負の数へ進むので、現物が多い側の差異も見えます。
押し間違いには「元に戻す」があります。直近50回まで遡れ、カウントを変える操作すべてが対象です(枠への保存や名前の変更は対象外です)。やり直しはありません。履歴はアプリを終了すると消えますが、カウントそのものは端末に保存されるので、電話が入って中断しても数は残ります。逆に言えば履歴に頼れるのは同じ作業の途中までなので、区画が終わったらその都度、枠に保存しておくのが安全です。
0に戻す方法は複数あり、消える範囲が違います。次の区画に移るときに押すのは、数字の右にある「リセット(長押し)」です。画面下の2つの初期化はどちらも長押しで発動し、カウントに加えて増加数の設定まで既定に戻します。とくに「枠・名称を残して数量のみ初期化」は確認なしでその場で実行されます(「すべてを初期化」は「すべて初期化しますか?」の確認を挟みます)。長押しする場所を間違えると、決めておいた単位が消えます。
| 操作 | カウント | 増加数の設定 | 枠と名称 | 枠の保存値 |
|---|---|---|---|---|
| リセット(長押し) | 0 | そのまま | そのまま | そのまま |
| 枠・名称を残して数量のみ初期化 | 0 | Vol- = 1、Vol+ = 10、修正用 = -1 / -10 に戻る | そのまま | すべて空 |
| すべてを初期化 | 0 | Vol- = 1、Vol+ = 10、修正用 = -1 / -10 に戻る | 空の3枠に戻る | すべて消える |
「枠・名称を残して数量のみ初期化」は、区画名を作り直さずに次回を始めるための操作です。ただし増加数の設定に加えて物理ボタンと触覚のスイッチもオンに戻るので、単位は入れ直す前提で押してください。空になるのは値だけで保存日時は前回のものが残るので、前回の記録は初期化の前に書き出しておくのが確実です。
単位と区画の決め方は、品物がどう持たれているかでほぼ決まります。「ボタンの割り当て例」はこの記事で想定した値であり、推奨値ではありません。
| 品物の状態 | 数える単位 | ボタンの割り当て例 | 区画の目安 | 気をつけること |
|---|---|---|---|---|
| バラのみの小物(ビス、部品) | 1個 | Vol- = +1、Vol+ = +10 | 引き出し1杯、箱1つ | まとめ掴みは数を固定する |
| 入数の決まった袋とバラの混在 | 本数に統一 | Vol+ = 入数(例 +10)、Vol- = +1 | 品番ごと | 入数が2種類あるなら枠を分ける |
| ケースで動く品(飲料、資材) | ケース | Vol- = +1、修正用 = -1 | パレット1枚、棚1段 | 端数のバラは別の枠にする |
| 重量で管理する品(粉、液体) | 数えず計量する | 容器の本数だけ Vol- = +1 | 保管庫1つ | 開封済みを数に入れるか決める |
| 高額・少数(貴金属、鍵、機器) | 1点 | Vol- = +1、修正用 = -1 | 什器1つ、保管庫1つ | 二人で別々に数えて突き合わせる |
| 陳列中の商品(売場) | 販売単位 | Vol- = +1、Vol+ = 列数 | ゴンドラ1本、棚1段 | 通路の反対側とエンドを一覧に入れる |
どの行でも、やっていることは同じです。1と数えるものを先に決め、数え直せる大きさに割り、まだ数えていない場所が自分から見えるようにしておく。この三つが揃っていれば、合わなかったときに数え直すのは棚の一部だけで済みます。